スタイリストやアパレル販売員がお客様心理を重視するほど、的外れになってしまう理由

 

こんにちは!
for*styleパーソナルスタイリストスクール(FPSS)代表の久野梨沙です。

 

スタイリストやアパレル販売員が独学で「お客様心理」を読むと的外れになりやすいワケ

▲引き続き、FPSS12期ご入学者さんの面談が続いています。お席もいよいよ残りわずか。間もなくキャンセル待ちに入りそうです。

 

先日、「典型的なオタクファッション」と「人気絶頂期のキムタクファッション」の関連性についてつぶやいたツイートが話題になっていました。

 

 

ここでは、多くの人が「オタクと聞いた時に思い浮かべるような典型的なファッション、具体的には

・プリントの入った緩めのTシャツの上に、着古したこれまたゆるめのチェック柄のシャツを羽織るコーディネート
・バンダナを頭に巻いたスタイル
・色落ちしたデニム

の由来は、90年代に大人気だったキムタクのファッションから来ているのではないか?という考察がされています。

 

さらに、この考察について、「きっと90年代にキムタクが大好きだった母親が、オタクの息子に服を選ぶに当たってその時の感覚に引っ張られて服を選んでしまったのが原因では?」という仮説が挙げられていました。

 

この仮説に対して、さらにオタク当人?と思われる人が「いや、オタクは母親に服を選んでもらっているわけではない。俺は自分でこういう服を選んで買ってた」と反論してみたり・・・と、盛り上がりを見せていたわけですが、それに対して私はすぐにこんなつぶやきから始める連投を。

 

 

こういう「特定のファッションが大きく広まった理由」について、よく「人間心理」にばかりその理由を求める人がいるんですが、そうすると的外れになってしまうことがよくあります。
これは、パーソナルスタイリストやイメージコンサルタント、アパレル販売員などのファッション関係の接客業においては特に注意しなければいけないことです。

 

なぜ人の心理のせいにばかりしていると、的外れになりやすくなるのか? 詳しく説明していきますね。

 

オタクの母は
キムタクファッションを真似したのか?

 

まず、「例のオタクファッションはキムタクを意識した母が選んだもの」という仮説について。

 

90年代後半にドラマ「ロングバケーション」などでキムタク人気が頂点を迎える

00年代初頭にドラマや映画にもなった「電車男」では、例の典型的オタクファッションが見られるように

 

ということで、時系列的には、確かにキムタク好きだった母親が息子にそれっぽい服を着せるという構図はなくもなさそう。ですが、オタクの皆さんの母親が全員漏れなくキムタク好きだったわけもなく、やっぱり一番現実的な理由として考えやすいのは、

オタクの皆さんが手に取りやすい場所にあったのがたまたまそういう服だった

ということです。

 

キムタクがブームを牽引したファッションはいわゆる「アメカジ」と呼ばれるジャンルですが、まぁこれに限らず、あるファッションが大流行すると、それはだんだんと高価格帯から低価格帯への店へと広がっていくようになります。
それは、確実に売れることが見込めるため、大量生産が可能になるからです(逆にニッチなジャンルの服はたくさんは売れないから少しずつしか作れない。
そうするとなかなか生産原価を抑えることも難しく、商品価格も下げられない)。

 

そして、例えばジーンズメイトやイトーヨーカドーの衣料品売り場のような、「郊外にもあって、どんな年齢の人でも、ファッションに興味が無い人でも入りやすく、価格的にも買いやすいお店」に大量に並ぶようになります。

 

さらに、00年代にはキムタク主演のドラマ「HERO」がこれまたヒットし、アメカジも再びリバイバルブームになっていたことが、これらの服が量産される後押しをしたと覚えています(このときには私はすでにアパレル業界で企画をやっていたので、ここは確実な記憶)。

 

こんな風に、オタクの人にとってアクセスしやすい店に「キムタク風アイテム」が大量に並んでいたから、ただ買った。別にキムタクファッションに憧れていたわけでもなければ、おそらく「あ、これはキムタクっぽい服だ」と認識されることもなく・・・・・・。

 

オタクの皆さんがみんな同じような格好になった理由は、これ以上でもこれ以下でもないと考えています。
買った人が本人かその母親かというのはオタクファッションが出来上がった理由とはほぼ関係なく、どっちにしても、ただ目の前にあったからそれらが買われたのだという「環境要因」と考えるのが自然でしょう。

 

人は、他者の服を
「あえて選んで買ったのだ」と勘違いしがち

 

スタイリストやアパレル販売員が独学で「お客様心理」を読むと的外れになりやすいワケ

 

オタクファッションの由来も紐解いてみれば「お店にそういう服がたくさん売っていたから」というなんてことない理由だったわけですが、しかし、オタクではない他者は、典型的なオタクファッションをしている人を見ると

「あの人達は、あえて選んであの格好をしているに違いない」

と考えがちです。

 

これはオタクファッションに限った勘違いではありません。

 

人間は、他者の何らかの行動を見ると、その行動の理由はその人の内面や性質に原因があると考えてしまう性質を持っているんです。
これを基本的帰属のエラーとか対応バイアスといいます。

 

例えば、電車の中で、目の前にお年寄りが立っているのにも関わらず、若い人がそのまま席に座っているのを見かけたとします。
この時、大抵の人が

「若いんだから、席を譲ってあげればいいのに」「気づいていないのかなぁ」「今の若い子は気遣いがないのかな・・・」

と考えてしまいがち。
こんなふうに真っ先に思い浮かぶのは、その行動の内面に基づく理由です。

 

でも、この若い人が席を譲らない理由が、

・実はこの直前に一度譲ろうと声をかけたが断られている
・実はこの人自身がなんらかの疾患や障害を持っていて立って乗ることができない

という可能性だって十分あるわけですよね。
これらの「外的な理由」を先に考えるのは、人間にとってはなかなか難しいんです。

 

冒頭に挙げた、

「オタクの母はキムタク大好き世代だからついそういう服を子供に着せたくなるのだ」

という仮説は、まさに「母が好きだから」という内面に、オタクファッションの発生の理由を見いだしていますよね。
「ただ単にお手頃な値段で行きやすいお店にたくさん売ってたから買われたんだ」という外的要因に基付いた行動という仮説は思い浮かびにくい、ということです。

 

服好きは余計に
「基本的帰属のエラー」を起こしやすい

 

スタイリストやアパレル販売員が独学で「お客様心理」を読むと的外れになりやすいワケ

 

そして自分が服好きであればなおさら、他者の服選びの理由を内面に求める「基本的帰属のエラー」は起こしやすいものです。

 

私の元へパーソナルスタイリングサービスを受けに来る「オシャレが苦手なお客様」がよくこんなことを話してくれます。

「お店に行くと、販売員さんから着ている服を指さして『あ、そういう色がお好きなんですか?じゃあこの服も良いと思いますよ』なんて言われることがあるんですけど、服を好きだと思って買ったことなんてないんですよね」

「『似合うかどうかより好きかどうかを優先して服を買えばいい』とアドバイスをもらったんだけど、そもそも服の好き嫌いという感覚がよく分からないので困る」

 

こういったお客様はまさに、「入りやすい服で売っていたから」とか「無難そうだから」「丈夫そうだから」といった外的な理由で服を買っている人たちです。
そう、オタクに限らず、服に特別な興味を持っていなくて「そこにあるものをただ、買う」という人たちもまだまだたくさんいるんですよね。

 

そのことに気づかず、一生懸命に独学で「お客様心理」を勉強してサービスに活かそうとしているイメージコンサルタントやパーソナルスタイリスト、アパレル販売員も見受けます。

しかし、「どういう服が好きかを探ろう」とばかり考えて「そもそも好きな服がない」「これまで服に対して感情が動いたことがない」という可能性を、果たして考えられているでしょうか?

 

本当にきちんと心理学を学べば、「すべての出来事が人間の性格や内面に原因があるわけではない」ということにも気づけるようになります。お客様心理を考えて動くべきところと、仕組みや環境を変えて対応すべきところを見分けられるようになる・・・ということ。

 

「おしゃれが苦手なお客様や興味のなさそうなお客様への接客が特に苦手」という人は、おしゃれ周りの仕組みやシステムという要因を軽視しすぎていないか、ぜひ一度見直してみて下さい。

 

FPSSで指導している
「おしゃれの外的要因へのアプローチ」

 

スタイリストやアパレル販売員が独学で「お客様心理」を読むと的外れになりやすいワケ

ちなみにFPSSでは、服装心理診断と「アクティブリスニング」の技法を使ったカウンセリング技術で、お客様の内面だけでなく外的要因へもアプローチして、おしゃれの悩みや癖の原因を導き出す方法を指導しています。

 

自分と違う環境に住んでいるお客様一人一人には、ぱっと見にはわからない「おしゃれの事情」があります。
しかしお客様自身はそれを特別なことと思っていらっしゃらないので、待っていてもお客様から話して下さることはありません。

 

より深くお客様のことを知り、それに寄り添ったファッションアドバイスをするためには必須のスキル。
知ると知らないとでは、お客様との距離が圧倒的に変わりますよ。

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執筆者プロフィール

久野 梨沙
久野 梨沙for*styleパーソナルスタイリストスクール代表
株式会社フォースタイル 代表取締役社長/一般社団法日本服装心理学協会 代表理事/公認心理師

服装心理学®に基づくパーソナルスタイリングの第⼀人者。大学で心理学を研究した後、大手アパレルメーカーの企画職を経てスタイリストに。社団法人日本服装心理学協会の代表として、装いが人の心に与える影響を研究する「服装心理学®」の啓蒙活動にも尽力。自己肯定感を高めるファッションカウンセリングや、服装を用いた印象コントロールに定評がある。著書に「最高にしっくり似合う服選び」(学研プラス)など。
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