【スタイリスト・イメコン向け】SNSでの集客のための発信がエスカレートして炎上…その原因と対応策
目次
「イタい若作り カジュアルおばさん」の投稿がSNSで炎上
X(旧Twitter)で「イタい若作り カジュアルおばさん」という投稿があって、多くの反発を招いています。
その投稿を見ていない方もいると思うので、まずはどんなものだったのかを説明すると…
ファッション系の情報提供を意図して作られたXの投稿なんですが、画像が2枚あり、左側には、女性が黄色いピタピタのTシャツにデニムのパンツ、スニーカーを履いていて、そこに「イタい若作りカジュアルおばさん」って大きく文字が入っている。
右側には、その女性を含む4名の同じくらいの女性が今のトレンドを意識したゆるっとした格好をしているというものです。
つまりは、左側のような格好をすると「イタい若作りカジュアルおばさん」に見えるから、右側のような格好をすると良い、そのコツを教えます!とする投稿です。
で、それが瞬く間に色々な人に引用ポストされて、
「いや、私は左側の方(「イタいおばさん」扱いされている方)がいい」
とか、
「痛いって何が言いたいの?」
とか、そんな感じで、いわゆる炎上ですよね。一時「カジュアルおばさん」がトレンドとなり、Yahoo!ニュースにまでなって私のタイムラインにまで届いてきたというわけです。
聞いたところによると、この投稿を作った人は昔からこういう感じの発信をずっとブログでやっていて、「イタいカジュアルおばさん」っていうモデルもそのご本人だとか。
自虐的なことをやって、でもファッションを変えればこんなに素敵になれるよっていうビフォーアフターの写真をたくさんブログで投稿しているようなんですよ。だから昔から言っていることは変わらない。
一貫してそれをやってらっしゃるようで、もしかしたら「なんで今になってこんなに炎上する?」って思ってるかもしれない。
昔からのこのコンテンツのファンの方の中にもそう思っている人もいるかもしれませんね。
なぜこの投稿が炎上したのか
確かにね、私もこれを見て、改めて昔を振り返って反省したんですが。
15年くらい前までは、私も、「これがNGファッション」みたいな記事を主にWeb媒体でたくさん書いてたんですよね。連載を持っていて、そこでたくさん書いてました。
そういう記事ってすごく読んでもらえるんですよ。だから編集さんからもどんどんテーマが来て書くように言われる。「30代のNG」とか「モテないNGファッション」とか。
そしてそういう記事はとても読んでもらえるし、読者さんからの反響も大きくて、当時は「参考になった」とか良い感想をたくさんいただきました。
昔からそういう発信をやってらっしゃった方ということは、その当時の気持ちのまま作っているんじゃないかな、と思います。
でも私自身は、いくらファッションを良くするための発信をしようという目的があっても、「こういうファッションは良くないよ」という発信をすると、それが呪いになってしまうこともあるってふと気づいたきっかけがありまして。
だから、そういう記事を書くのは10年くらい前から一切やめた、という経緯があります。
やめたとはいえ、一時は書いていたわけですから、それはずっと胸に持ち続けて、反省しなければいけないと思ってますが。
で、ここ数年。
特にファッションや外見に関することにおいて「これはダメです」と何かを下げた上で「こうしましょう」という発信が、本当に受け入れられなくなってきました。
特に雑に、女性はこう、男性はこう、おばさんはこう、というように年齢や性別で大きく区切って、上から目線でファッションを教えるような発信は、本当に本当に受け入れられなくなってきたと感じます。
今回の炎上した投稿も、「カジュアルおばさん」と年齢や性別で大きく区切り、「この年齢の女性はこういう格好をしてはいけない」と言っています。この雑なくくりが、反発を招いたまず1つの大きな原因です。
今は、同じ年齢や性別でも見た目や考えていること、生活が全然違います。同じ「おばさん」と呼ばれるような年齢の人の中にもいろんな生活をしている人がいて、生活が違えば良いと思うものも違う、という風になってきました。
そしてそういう多様な価値観が良しとされる時代。
自分なりの良さを追求できる時代にもなってきました。
それはファッションでも同じで、人からとやかく言われずに自分の本当にしたい格好を我慢しなくていい風潮になってきました。
これはとても良いことです。
だから、そういう風潮に逆行するような、「おばさんはこんな格好しちゃダメ」というような発信は本当に受け入れられません。
みんな、もうあんな時代に戻りたくないんです。
多様性を否定する投稿だから、反発された。これが2つめの原因です。
炎上したくないけど、集客のためには発信しなきゃ…どうすれば?
そういう面で、おしゃれのことを不特定多数に発信するのは、本当に難しい時代になったなと思います。
パーソナルスタイリストやイメージコンサルタントとして活動している人は、どうしてもSNSなどでおしゃれの発信をしないわけにはいきませんよね。
発信して誰かに見つけてもらわなければ、集客なんてとてもできませんから。
でも、誰にでも届くようなふんわりとした発信は、誰にも届かない。誰の心にも響かないので、到底サービスへのお申込なんてしてもらえません。
そう考えると、ある程度お客様を絞り込んで発信しなきゃいけない。
でもその絞り込みが雑で、その雑さが投稿内容にも表れてしまうと、今回のように逆効果になっちゃいます。
だから、多数に発信するのはすごく難しい時代だなと思うんです。
じゃあ、私はどんなふうに発信しているかというと、属性で区切って「あなたはこうした方がいいよ」っていうふうに紋切型に発信することはもうしていません。
読んだ人それぞれが自分にとってのベストをどう見つけるか、自分にとって一番いい服や考え方を見つける方法やヒントを主に発信しています。
だから、そういう意味では、「カジュアルおばさん」の投稿と比べると、すごく回りくどい発信になっています。
例えば、「あなたはこれを着ていればいい」って具体的なコーディネートをぱーんと出せればいいんだけど、それはできない。そんな簡単に答えを呈示できるもんじゃないからです。
だから、「こういうふうに考えたらいいよ」っていう考え方を発信することになります。なので長文だし、切れ味は悪い(笑)。
その切れ味という意味では、炎上している「イタいカジュアルおばさん」の方がよっっっぽと鋭い。だからこそ多くの人の目に留まったわけですが、でも、その切れ味って特定の人を本当にざっくり切ってしまうものなんですよね。
それであれば、そんな切れ味は持たなくていいって思うんです。
私の発信は回りくどいし、ちゃんと読まなきゃわからないし、読んでから自分で考えなきゃいけない。
だから「もっとわかりやすく書いてくれよ」って思う人もいるかもしれません。でも、そういう発信の仕方しかできないんですよね。
また、特定のコーディネートやファッションアイテムを正解として出したいと思うときには、例えば、「こういうふうに思っているあなたはこうした方がいいです」とか、「これに悩んでいるあなたはこうした方がいいです」とか、「こういうことを考えているあなたはこうした方がいいです」というふうに、読む人のお悩みや価値観でフィルタリングした上で具体的な答えを提示するような発信が多いかなと思います。
特定の人に悩んでいる人に具体的な解決策を提示するのは「親切」になり得ますが、悩んでもいない人に解決策を伝えるのは「おせっかい」「余計なお世話」です。
今回の炎上も、「自分がイタいおばさんに見えてるんじゃないか」と悩んでいる人にだけ届けたのであればここまで反発されなかったかもしれない。悩んでない人にまで届いてしまったから反発の声が上がったんです。
だから、必要な人にだけ届くように、前提条件を明記するなどして、発信者側がしっかり工夫すること。これが大切です。
そのとき、「できるだけたくさんの人に私の発信を見てもらいたい」というエゴが出ないように気をつけなきゃいけません。その瞬間に、雑なくくりで発信してしまうことになるからです。
必要でない人に届けることは、その発信が無駄になるだけならまだしも、見る人を傷つけたり、余計な呪いをかけることにまでなってしまいます。それを思って、発信者はぐっと唇噛みしめて、自制する。
「集客のための発信」は、たくさんの人に読んでもらえればよいわけではない。目的を見直して!
でもこれって回り回って自分を守ることにもなるんです。
「カジュアルおばさん」のような投稿をすると、確かにいろんな人にぐさっと刺さるので、閲覧数はものすごいことになります。たくさんの人に届くという目的は達成できる。
ただ、たくさんの人に届いても、サービスへのお申込は全然来ないでしょう。当然です。賛否の「否」の方が圧倒的に多いんですから。これまでついていてくれたファンまで離れてしまうことにもなりそうです。
対して、たった数十人にしか見られなかった投稿でも、そのすべての人に深く「ためになったな」「読めて良かったな」と思える発信内容であれば、必ずその中の何人かがサービスを申し込んでくれます。
集客のために発信をしているのなら。
どちらのほうがよいかは、もう答えは明らかですよね。
炎上する発信をしてしまう大きな要因は、お客様のニーズを引き出す力の不足にもある
そしてもう1つ。この投稿に出会って、ずっと考えていたこと。
投稿者も、何も誰かを傷つけようとして発信したわけじゃなかったと思うんですよね。でもなぜ、こういう投稿しかできなかったんだろう…と。
で気づいたのは、こういう、ステレオタイプな「正解」の情報発信しかできないということは、おそらくお客様の中にあるいろんなニーズに気づけていないからなのかな、と。
つまり、お客様のカウンセリングができていないのではないかと思うんです。
1人1人に向き合ってお客様のカウンセリングをして、その人たちが何に悩んでいるのかを知っていくと、同じ年代でも悩んでいることが全然違うし、生活が全然違うことに気づくはずですから。
だけど、それをやってないと、紋切型に、もう元々自分が用意してた答えを提示することしかできなくなります。
「おばさんはこうした方がいいんだよ」みたいな感じですね。そうすると、やっぱり傷つけてしまうことがあると思うんですよね。
だから、不特定多数への発信に限らず、マンツーマンでスタイリストとかイメージコンサルティングのサービスをする場合にも、答えを教えることよりも、そのお客様それぞれが抱えている問いや悩み、課題を知る力の方が、スタイリストとかコンサルタントにはよっぽど必要なんじゃないかなと思います。
それがわからないと、全然的外れな答えを勝手に与えてしまい、傷つける。だから、一番大事なのはやっぱりお客様が抱えている問いを知る力なんじゃないかな。
そういう意味でも、引き続きFPSSでは、しっかりカウンセリングに力を入れて教えていきたいと思っています。
お客様1人1人が抱えている課題をちゃんと引き出して、引き出して、引き出しきってから答えを出すお手伝いをする。そういう練習を積んでいきたいなと。それをやると、本当にいろんなお客さんに対応できるし、なにより、炎上してしまうような発信は自然としなくなる・できなくなると思います。
お客様に幸せを与えるべき仕事なのに、傷つけてしまうんじゃ悲しいですよね。自分の力を、ぜひ皆が幸せになる方向に使って欲しいと心から思います。
そんなスタイリストを目指したいなと思う方は、FPSSにお越し下さい。
第17期は満席となりました!
次期は来年春ごろの開講を目指し
調整中です
お客様のなりたい姿を実現するための服装心理学に基づくスタイリングも学べることから、他スクール卒業生の学び直し入学も増えているFPSS。
2024年8月開講の第17期では、ご案内しきれなかった方もいらっしゃいましたこと、改めてお詫び申し上げます。
まだまだご入学お問合せを頂いておりますので、現在、来年春頃の開講に向けて、講師のスケジュールを調整中です。
次期も早めにお席が埋まってしまうことが予想されます。
少人数制のためすべての皆さまのお受け入れが叶わずご迷惑をおかけいたしますが、ご入学ご希望の方は公式LINEでいち早く開講をお知らせしますので、ご登録の上お待ち下さい。
執筆者プロフィール
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株式会社フォースタイル 代表取締役社長/一般社団法日本服装心理学協会 代表理事/跡見学園女子大学 兼任講師/公認心理師
服装心理学®に基づくパーソナルスタイリングの第⼀人者。大学で心理学を研究した後、大手アパレルメーカーの企画職を経てスタイリストに。社団法人日本服装心理学協会の代表として、装いが人の心に与える影響を研究する「服装心理学®」の啓蒙活動にも尽力。自己肯定感を高めるファッションカウンセリングや、服装を用いた印象コントロールに定評がある。著書に「最高にしっくり似合う服選び」(学研プラス)など。