容姿コンプレックスの解消法1〜受け取り方で世界は変わる
フォースタイルでは、個人スタイリングのご依頼をくださったお客様とはまずじっくりお話しすることからスタートしますが、「服装心理学を活かしたパーソナルスタイリング」を謳っているために、ファッションのお悩みの話をきっかけに、いろいろなお悩みをお聞かせ頂くことがあります。
中でも多いのは、外見に関するコンプレックスです。
しかしこう一口に言っても、その具体的な内容は実に様々。背が低いという悩みもあれば、背が高いというのも悩みになり得ます。「太っているから」という人もいれば、「全然太れなくて困っている」という人、とにかく自分の顔がキライという人、などなどなど・・・・・・。
本当に人の数だけコンプレックスも種類があるものだなぁ、と感じます。
コンプレックスでも軽いお悩み程度ものであれば、お似合いになる服をスタイリングして自信をつけて頂くだけで自然と改善していきます。
しかし、コンプレックスの深刻度が増すほど、単にスタイリングをしておしゃれ度を上げただけでは太刀打ちできなくなっていきます。それどころか、下手をすると「もっと洋服を買わなければ、自分に自信が持てない」とばかりに、スタイリングを受けることに依存させてしまいかねません。
正直、パーソナルスタイリングの会社としては、そんな方はとっても良いお客様。でもやっぱり服装心理カウンセラーとしては、買ってもコンプレックスの根本解決につながらないお洋服を、薦めることはできません。
この記事の内容
同じ出来事でも受け取り方は様々。コンプレックスを生みやすい受け取り方とは?
たとえば、雨が降っているときに「ああ、うっとうしいなぁ。憂鬱だなぁ」と感じる人もいれば、「雨の日は心が落ち着くから好き」と思う人もいます。
「雨」という出来事と「うっとうしい」とか「心が落ち着く」といった感情とは直接的に関係はなく、すべてはその人が「雨」をどのように受け取るかで決まるのです。
同じように、ぽっちゃりした女性の中には「もう少しやせないと何を着てもおしゃれに見えなくて本当にイヤ!」と悩んでいる人もいれば、「ふっくらしているから何を着ても女性らしく見えるし、あまり痩せようとは思わないんですよね」という人もいます。
パーソナルスタイリングを担当する中で、ほとんど同じスリーサイズの2人の女性が、お一人は前者の考え方で、もうお一人はまったく逆な後者の考え方だったことがあり、体型がほとんど同じでも受け取り方が全く違うものだ、と改めて驚いたものでした。
つまり、まったく同じ容姿の2人がいたとしても、その両方が同じように容姿コンプレックスを持つとは限らないのです。となると、容姿がコンプレックスを持つ直接の原因ではないということ。なのに容姿をカバーすべく着飾ったりエステに行ったりメイクをがんばったりしても意味はないということ・・・当然ですよね?
やわらか頭でコンプレックスに勝つ!外見に関する思い込みを外そう
では、早速例に挙げた「太っている」ことに関するコンプレックスを解消していきましょう。こんなコンプレックスを持っている方の頭の中身は、こんな感じ。
私は太っている ▶ おしゃれをするにはやせていなければならない ▶ 私はおしゃれをしても無駄
「太っている」ということが、「身長から考えたときの平均体重」などから考えても事実だとしましょう(まれに太っていないのに「太っている」と思い込んでしまっている人もいますから・・・・・・)。
となると、ここで注目すべきは、真ん中の部分です。
「おしゃれをするにはやせていなければならない」は、どこでも通じる事実と言えるでしょうか?
これが事実であるためには、太った人の中でおしゃれな人は皆無だということが証明されなければいけません。・・・・・・なんて堅苦しいことをいわなくても、少し考えれば、おしゃれなぽっちゃりさんのこと、たくさん思い浮かびますよね?
海外では痩せすぎていると「女性として魅力がない」とされることもあるくらいです。
となると、「おしゃれをするにはやせていなければならない」というのは、この人の受け取り方。単なる思い込みということになります。
この単なる思い込みに過ぎない(論理的でない)受け取り方のことを、心理学用語で「irrational beliefs(イラショラルビリーフ)」と呼びます。コンプレックスの解消には、「太っている」という事実を変えることよりも、このイラショラルビリーフを解消することが必要なのです。
「服のセンスがないから洋服を買いに行くのが怖い」という人には、「洋服を買いに行く人は皆センスがある人なのか?」と問います。
コンプレックスを生む原因はほとんどが単なる思い込みですから、こんな問いを繰り返しているうちに、それが論理的な事実でないことに気付き、なんでそんな思い込みに足を取られるようになったんだろう・・・・・・と考えていくようになります。
ここまでいけば、コンプレックスの解消まであと少し。頭を柔らかくして、自分の容姿やコンプレックスに対して他の受け取り方がないか、考えていくのです。
あなたの頭を誰かの価値観で支配されていませんか?
「そもそもなんで『太っているとおしゃれになれない』なんて思うようになったんだっけ・・・・・・」と考えていくと、多くのイラショラルビリーフは、自ら生み出したものではないことに気づきます。
スリムなモデルしか載っていないファッション雑誌、ダイエットを煽るメディア、自分より先にイラショラルビリーフを抱えてしまった友人の「痩せなきゃあんな可愛い服着られない」という言葉・・・・・・。
そんな周囲の価値観が、いつの間にか自分にすり込まれてしまうのです。
もし、あなたがコンプレックスに悩まされているのなら、それが容姿のことであるなしに関わらず、「そのイラショラルビリーフは誰のもの?」と自分に尋ねてみて下さい。そして、それがもし心当たりがない誰かの忘れ物だとわかったら、いち早く捨ててしまうことです。
あなたの頭の中を、あなた自身の価値観以外のものに譲り渡す必要なんてどこにもありません。
今回の記事に関連する服装心理学用語
論理療法
このコラムでご紹介したようなコンプレックスの解消法を「論理療法」と呼びます。心理療法家アルバート・エリス(1913-2007)によって創始されたもので、悩みのほとんどは単なる思い込みに起因するもので、事実に基づき物事の見方を行うことによって解決されるという考え方がベースとなっています。
論理療法では、この思い込みを外すためにカウンセラーが様々な問いかけを行います。服装心理学では、服装心理カウンセラーがファッションへのコンプレックスを抱くに至った「思い込み」をカウンセリングで探りながら、その受け取り方を変えるべくさまざまな思考法を提案します。
イラショラルビリーフ
ビリーフ(Belief)とは、人が持つ観念や受け取り方のこと。イラショラルビリーフとは、論理的でない単なる「思い込み」に基づくビリーフのことを指します。
「人は愛されていなければならない」「女性は痩せていなければならない」など論理的な必然性がなく、自分を縛り、苦しめる原因になります。
ただ、自分の信じていることが単なる思い込みだとは誰しも気づきにくいものです。そこで服装心理カウンセリングでは、発する言葉1つ1つに慎重に耳を傾けながら、その人が抱えているイラショラルビリーフを取り出していきます。