前回までの記事では、感覚的な片付けが洋服のコーディネートを作りにくくする危険性がある、ということをお伝えしたところ、たくさん方から「あるある!」とご感想をいただきました。それも年齢、性別、職業がばらばらの方たちから、です。
いかに多くの方がワードローブの整理収納に手こずっているかを私も改めて実感しました。

さていよいよ今回からは、洋服の片付け!・・・・・・の前に、ぜひやっておいていただきたいことがあるのです。
それは、整理前の今のワードローブがどんな状態になっているかの分析。実はそこから、あなたの洋服の消費傾向のみならず、奥深くの心理状態まで見えてくるのです。

「大切なモノ」の扱い方

持っている服でわかる、あなたの心理誰かへ贈り物をするとき、品物をむき出しの状態で渡す人はいないでしょう。プレゼントがすばらしいものであればあるほど、ラッピングもそれに合わせてグレードアップさせたくなるものです。
また、もし自分が会社で商品企画の担当者であれば、開発した商品のパッケージにまでこだわりたくなるはず。

その「もの」への扱い方には、自分がどのくらいの価値を感じているかが表れます。大切なものであれば丁重に扱いますし、例え高価なものでも自分にとって価値が感じられないものであれば、無意識のうちにおざなりな扱い方をしてしまうもの。

そしてそれは、対象が自分であっても同じことです。
「自分を大切にする」とよく言いますが、それには自暴自棄な行動をしないということはもちろん、自分の外見を磨くということも含まれます。その度が過ぎれば「ナルシスト」などとからかわれることもあるかもしれません。確かに、自分に異常なまでの愛着を感じる「ナルシシズム」の状態にまでは至っていないにしても、身だしなみを整えるという行為は、自分自身に愛情を持っているからこそ生まれ得るものでしょう。

ワードローブには自己評価の心理状態が表れる

自分をどんな風に扱っているかを客観的に振り返りたいのなら、クローゼットの中身を確認するのが一番。そこからは、飾らない率直な「自己評価」が見て取れます。
私はフォースタイルで「ワードローブチェック」というサービスを提供していますが、その中で実に様々な「自己評価」の形を拝見してきました。

持っている服でわかる、あなたの心理たとえば、10年ほど前に流行したデザインの服で埋め尽くされたクローゼット。どれも着用感があり、最近買ったような新しい服は見当たりません。
そんなワードローブを拝見したときには、「10年前までは自分を大切に扱う余裕があったのに、それが最近はなくなってしまったのでは」と推測します。
そしてそのことについてお客様にたずねていくと、「10年くらい前に職場が変わって、それ以来仕事に忙殺され続けている」など、納得がいく答えがすぐに見つかるものでした。

また、クローゼットの中の8割方がシックな・・・・・・いえ、率直な表現をすると地味な・・・・・・洋服で埋め尽くされているのに、端の方に少しだけ、明らかに雰囲気が違う華やかな洋服があるような場合。
「これはお客様が買ったものではないですよね?」とたずねると、「そうなんです、うちの主人がくれるので捨てられないんですけどちょっと勇気がなくて着られなくて」なんて答えが返ってきます。
ここからは、ご主人からの評価は高いのに、お客様の自己評価は低いのでそれを受け入れられていないという構図が見えてきます。

では、華やかで、かつ最近買ったとすぐわかる新しい服でクローゼットが埋め尽くされていれば自己評価が高いのかというと、必ずしもそういうことではありません。
ばらばらなテイストの洋服を次々に買っては1回着るだけで捨ててしまうような人、結局着ない服ばかりになってしまうのに買わずにはいられないような人は、自分に自信が持てず、ただひたすら外から飾り立てることで気持ちを支えている可能性があります。
買い物中毒に陥っていると思われる人のカウンセリングを行うことも多くありますが、みな著しく自信に欠けているのが共通点。そんな方は、パーソナルスタイリストのお買い物同行を受けるより、カウンセラーと話をする中で自信がなくなってしまう原因に気づくことが先決。いくらスタイリストにおしゃれな洋服を選んでもらっても、心の底から自己承認ができない限り、永遠に自分のファッションに満足できることはないからです。
それでは次の記事からは、もう少し具体的にワードローブと心理の関係性をお話ししていきましょう。それを知っておくことで、洋服の整理収納がもっと根本的に簡単に、ラクにできるようになるはずです。
文/スタイリスト・服装心理カウンセラー 久野梨沙 (株式会社フォースタイル) 
久野 梨沙

執筆者
久野 梨沙(ひさの りさ)

パーソナルスタイリスト / 服装心理カウンセラー。( 社 )日本服装心理 学協会代表理事。服装心理学に基づくスタイリングの第一人者。大学 で認知心理学を研究した後、大手アパレルメーカーでの商品企画職を 経て個人向けスタイリストに。1 万件に上るスタイリング実績を元に、 精度の高いイメージコントロールをすることで定評がある。